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真言アイロニー

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神戸市西区に位置する真言宗御室派寺院「宝珠寺」。十七世住職・平井尊士(ひらい そんし・たかし)は2017年12月23日、享年51歳という若さでこの世を去りました。

彼は僧侶として真言宗の祖「空海」の教義に従い、自己満足では決してなく常に他者の幸福を願い苦しみを取り除くという心(利他心)を根底とし、多くの先師よりその教えを受け継ぎ活動してきました。同時に大学教授という肩書を持ち、日本語日本文学科の教鞭をとり、多くの学生をはじめ、教師・職員からも多大な信頼を得ていました。彼の早すぎる突然の死に、人生に彼に係った多くの人々は驚きそして悲しみを隠し得ませんでした。彼の多忙で活動的な半生は、彼を慕う者には親身に接し、人生の指針を与え、強いカリスマ性と大きな影響力を持っており、まさに「生き急いだ」感がしてなりません。その反面、エキセントリックで豪放磊落な性格はその場の笑いを誘ったり、周りを焦燥させたりすることもしばしばでした。

そんな彼が残した偉大な業績、功績、人柄、残された最愛の妻「葵」さんへの想い、そして彼によって人生の指針を見つけたばかりの監督:石原ひなた(illi237)が後世に伝えるべく映画化することによって風化させないという考えから有志が集い、ここに平井が残した「縁」が生まれました。

「おう、ひなたくんか。ケンカ強いん?」初対面の挨拶がこれなんやから、僧侶も色々おるんやなぁ。そんなことをふと考えながらも、ひなたの表情は変わることはなかった。ひなたにとっては父親が懇意にしている真言宗僧侶、そして女子大の教授という“その辺にいる大人のひとり”との出会いにすぎなかった。平井との時間を重ねるうち次第に自分の本当にやりたいこと、諦めていたことの本質がうすぼんやりだが見えてきたひなたに初めて降りかかる、身近な者との永久の別れ。
突然訪れた平井の死によって悲しみに暮れる平井最愛の妻「葵」。
それまで、決して出会うことのないはずだった人々の「縁」が繋がり始める。
裕福ゆえに、親からの愛情を感じられずにいた大学生「花撫」はひなたに“出会いと別れ”そして“本当の気持ち”を伝えるべく夕暮れの街を奔走する。
平井と離れるのを厭い大学卒業後、葬儀社に勤めた「石橋」とその妻「彩子」。平井のゼミを通して知り合ったふたりはただ幸せな未来を築こうと日々を生きていた。
平井の勤める女子大に出入りするのIT系商社マン「松井」はビジネスパートナーとして多忙な日々を送っていた。進路に迷う平井ゼミの学生「みどり」の悩みに真摯に向き合い、励まし、時には苦言を呈し解決へと導こうとする。
オーディションを受けながら女優を目指している内向的な性格の「カンナ」が映画プロデューサー「今」に出会ったのは、とある映画のオーディション会場だった。カンナの心の闇を見抜いた「今」は彼女の人生に一筋の光を当てようと画策する。

様々な時系・場所でいくつもの出会いと別れがあり、人それぞれにドラマがある。

そして、失った何かを取り戻すために、人は前に進む。
悲しい別れを乗り越えたひなたの未来に見えた光景。

ぼくたちは「縁」でつながっているんだ。

(パンフレットより)